コラム 2025年01月22日
インドアッサム州に日本語学校設立に向け、額賀衆院議長、アッサム州首相、インド大使と会談
《インド大使館で開催されたセミナー「FOCUS-ASSAM」に参加》
弊社は、1月22日にインド大使館で開催された「FOCUS‐ASSAN」というセミナーに参加した。アッサム州政府は、2025年2月25日と26日にモディ首相の臨席を仰ぎ、アッサム州の中心都市グワハティで「アドバンテージ・アッサム2.0―投資とインフラサミット2025」を開催する。「FOCUS‐ASSAN」は、そのサミットへの参加を促すため、アッサム州が政府首脳をプレゼンターとして開催するセミナーである。セミナーはインド国内4都市と海外3ヵ国(韓国、日本、シンガポール)で開催されることになっている。
セミナーの内容は、日本の企業等にアッサムへの投資を促すべく、その魅力をアピールするものだった。以下はその内容を、弊社が参考までに要約したものである。なお、内容をきるだけ正確にお伝えしたいところですが、理解力や文章力の拙さゆえに至らぬ点が多々あることをあらかじめお断りし、お詫び申し上げます。
〇 シビ・ジョージ インド大使の挨拶
アッサム州はインドで最も活力のある州である。「アドバンテージ・アッサム2.0」の開催に先立ち、アッサム州の首相が多忙な時間を割いて訪日されたことを、日印関係の飛躍に貢献するものとして歓迎したい。日印関係は政治、経済、安全保障の面で、かつてないほど強固になっているが、それに比べると民間の交流拡大余地は大きい。インドに進出する日本企業は現在約1,500社に止まっているが、15,000社程度まで拡大する余地があると考えている。また、日本で暮らすインド人は約45,000人に過ぎないが、これも450,000人程度まで増やせるはずである。アッサム州の首相は、州のみならず、連邦政府にとっても重要な人物である。彼が来日し、インドに高い関心を持つ日本企業に直接話をすることが、日本とインドの民間交流の拡大加速の契機になること期待したい。
〇 JETRO 仲條理事の挨拶

アッサム州は、インドと中国及びアセアン諸国を結ぶ起点となるため、地政学上、極めて重要な地域である。インド連邦政府もその認識のもと、アッサム州に対して積極的な経済振興支援を実施している。最近のビックニュースはタタ財閥による半導体組立工場の設置(総投資額33億ドル)である。若年層の他地域への流出が続いているため、アッサム州は連邦政府と協力して雇用創出(産業誘致)に積極的に取り組んでいるが、これはその成果のひとつと考えられる。このほか、地域のインフラ整備、アセアン諸国やバングラデシュとのコネクティビティ改善にも積極的に取り組んでいる。アセアンには本邦企業が約12,000社進出しているが、インドとアセアンの交通ネットワークが進化すれば、アッサム州へ進出する日本企業が飛躍的に増加することが期待できるだろう。
地政学上の重要性から、どの国でもアッサム州に進出できるわけではなく、インド政府に許可された国と地域に限られている。日本はインドとの友好関係を背景に、選ばれた国の一つになっている。
〇ドウィヴェディ博士(首相付首席秘書官)のプレゼンテーション
アッサム州の魅力について、①日本との深いつながり、②インド国内でもトップクラスの経済成長地域であること、③34時間の飛行機による移動で世界人口の30%をカバーするという地理的な優位性、④急速に整備が進む物流インフラ、⑤豊富な天然資源(石灰石、原油、天然ガス、水資源、竹など)、⑥教育・訓練された若い労働力が多いこと、⑦広大な産業用地のストック、などを挙げた。
業種ごとにパッケージ化された優遇措置、カスタマイズされたインセンティブ、ITを活用した手続きの簡素化などを用意し、アッサム州への投資が成功するように手厚いサポートを用意しているとのことである。これらは他地域との誘致競争上で優位を確保するための戦略的な措置とみられる。
進出によって現地企業との大きなシナジーが期待できる産業として、石油化学、エレクトロニクス観光、再生可能エネルギー、防衛装備関連、竹を資源として利用する産業などが紹介された。
アッサム州の年齢の中央値は22.7歳とのことである。これはインド全体の26.8歳を大きく下回っており、アッサム州はインドでも特に若年人口の構成比が大きい州であることが推測できる。そのため、教育機関が多くなっているとみられる(図表2)が、これにはアッサム州政府の教育に対する積極的な姿勢も反映されているようだ。

アジア開発銀行(総裁は財務省の元財務官の神田氏)の支援によってアッサム・スキル・ユニバーシティの設立が進められているが、同大学の学長はアッサム州の首相である。首相自身が人材育成の陣頭指揮に立っているわけであり、人材育成に対するアッサム州政府の考え方を表す人事と考えられよう。若く優秀な人材が大量かつサスティナブルに供給できる体制が整えられていると考えられる。
また、アッサム州にはインド工科大学グワハティ校がある。全インドでトップテンに入る評価を受けている大学だ。インド工科大学は理工系大学の世界最高峰であり、先端IT分野に多くの優秀な人材を送り出している。日本のIT産業に大きなインパクトをもたらすような人材、日本で不足が顕著になっているIT人材が多くいることが期待できる。
〇エッカ博士(アッサム州政府主席副次官)のプレゼンテーション
アッサム州の観光資源についてのプレゼンテーションだった。2025年1月にアメリカのニューヨークタイムズ紙が恒例の「今年(2025年に行くべき52の場所」を公表したが、4位にアッサム州がランクされた。アッサム州にとって観光資源を活用した産業育成に大きなフォローの風が吹いたことになる。
来訪者需要のポテンシャルが大きいこと(アッサムが34時間のフライトで行ける範囲内の人口が世界の30%を占める)、多様なエンターテインメント野生動物、自然、伝統芸能、歴史、ゴルフなど)を提供できることなどがアッサム州の観光産業の魅力とのことである。投資や起業に関しては、アッサム州が積極的なサポートを提供するとのことである。
〇ミシュラ氏(タタ・エレクトロニクス社)のプレゼンテーション
タタ・エレクトロニクス社は、インド最大の財閥であるタタ・グループにおいて、エレクトロニクス事業の中核を担う企業である。2024年からインド国内で初めてとなる先端半導体の生産に向けた取り組みを開始し、グジャラード州ドレラに半導体製造工場(2026年稼働予定を、アッサム州ジャギロードに半導体製品の組立工場を設立する2025年11月の稼働予定)。
この計画は2024年2月末にインド連邦政府に承認され、アッサム州の工場は2025年11月に稼働する予定となっている。先端半導体工場としては異例のスピード立ち上げとなっているが、これにはインド連邦政府及びアッサム州政府のサポートが貢献しており、これこそがインド及びアッサムに投資する大きな魅力の一つと述べていた。
タタ・エレクトロニクス社のアッサム工場は最終的には1日当たり4,800万個の半導体製品の組み立てを目指している。タタ・エレクトロニクス社は幅広いパートナーと、様々な分野で協業したいと考えており、多くの日本企業とアッサム州で仕事ができることを期待しているとのことであった。
〇サルマ博士(アッサム州首相)のプレゼンテーション
モディ首相はアッサム州がインド経済のリード役となるべき地域と認識している。彼のリーダーシップのもと、アッサム州の域内総生産は2017年度から2025年度にかけて年平均12%超の急速な成長を記録している。タタ・グループ、ペプシコ、ヒンズースタン・ユニリーバなどの大企業が昨年だけで47億ドルの投資を実施している。日本は先進的な技術やイノベーションで世界をリードしている国であり、インドにとって魅力のあるパートナーである。大使が指摘したように、現在1,500社に止まるインドへの進出企業数を大きく増やす余地があると考えている。
誘致に関する手続きについて、アッサム州政府はその簡素化、効率化に取り組み、透明性を高めて、行政に対する不満の低減に努めている。進出企業の負担軽減を積極的に進めていく考えだ。また、特に日本企業に対しては、タタ・エレクトロニクス社の新工場の近隣に「ジャパン・タウン」を用意する考えである。また、豊富な水力や太陽光などの再生可能エネルギーの提供によって、進出企業のグリーントランスフォーメーションのサポートもさせていただく。
アッサム州の最大の強みは人材である。勉強熱心な若い人材が多数いることに加え、そのような人材をサスティナブルに供給できる教育体制がある。進出企業への良質な人材の供給はもちろん、技能実習制度や特定技能制度を活用した日本への人材供給にも十分に対応できる。ポテンシャルが大きいアッサム州の人材によって、日本とインドの人材交流を飛躍的に拡大させ、日本におけるインド人材の存在感を大きく引き上げたいと考えている。人材交流の活性化は、両国のパートナーシップの更なる飛躍に繋がることが期待できる。2月25〜26日に開催される「アドバンテージ・アッサム2.0投資とインフラサミット2025」にはモディ首相をはじめ、連邦政府の要人も参加する予定となっている。連邦政府は日本を戦略的なパートナーとして重要視しており、今回のサミットが日印両国関係の更なる飛躍に貢献することを期待している。日本から多くの企業が参加されることを期待している。
《日本への「ゲートウェイ」としてアッサム州グワハティに学校を設立する》
弊社は「アドバンテージ・アッサム2.0投資とインフラサミット2025」に参加する予定である。中長期的に深刻化が予想される日本の人材不足解消のため、アッサム州に人材開発拠点、日本への「ゲートウェイ」として、職業訓練機能を併設した日本語学校の設立を目指す考えだ。今回のセミナーに参加し、州幹部のプレゼンテーションを拝聴し、その意思を一段と固めることができた。
ドウィヴェディ博士(首相付首席秘書官)やサルマ博士(アッサム州首相)のプレゼンテーションで示されたように、アッサム州には若く、優秀な人材が豊富に存在することは明らかだ。また、年齢の中央値や充実した教育体制を考慮すると人材の供給はサスティナブルであることも容易に想像できる。
弊社はアッサム州政府の協力を仰ぎながら、このような人材を集め、選抜し、日本語の教育はもちろん、先ずは雇用の不足感が著しい職種(ドライバー、介護、建設などについて実務訓練を実施できる教育機関を設置することを構想している。更に、日本で生活する上での必要な知識、ビジネスマナー、日本の文化や倫理観などを教え、来日後に一日も早く戦力になるような教育も行う。このように育成した人材を、技能実習制度や特定技能制度を通して日本での就労に誘導することを目指す。もちろん、インド工科大学IITグワハティ校をはじめ、アッサム州の大学や高等専門学校で学んだ優秀な技術系学生を、高度人材として日本企業に対し、就労斡旋も目指す考えだ。
《アッサム州に学校を設立する意義は大きいと確信している》
2023年3月期の一人当たりGDPでみると、アッサム州の一人当たりGDPはインド全33州・直轄領中29位の11.9万ルピー直近の1インドルピーは約1.8円で計算すると21.4万円で、同2位のデリー首都直轄領の43.0万ルピーを大きく下回っている。発展が遅れている要因は、19世紀のイギリス=ビルマ戦争後にインドに組み込まれたという歴史的な経緯から2000年代初めまでインド中央政府と一部地域で厳しい対立が続いていたこと、バングラデシュとネパールに挟まれた狭路でインド主要地域と繋がっているという地理的な制限、雇用吸収力のある産業は茶栽培アッサムティーや絹織物(ムガシルクに限られていることが挙げられる。
このような状況を改善するために日印両政府は積極的に行動してきた。中国と国境紛争を抱えるインド北東部地域は重要地域として注目されており、2017年に日印両政府は「アクト・イースト・フォーラム(JapanIndiaActEastForum)」を立ち上げ、同地域の発展の後押しに積極的に取り組んできた。インフラ整備などで大きな成果があったと高く評価されているが、同地域の産業育成や既存産業の生産性向上は十分とはいえない。地域経済の本格的な離陸のためには、産業育成や既存産業の生産性向上が必要であり、その鍵を握るのはインフラの整備と人材育成を含むソフト面での支援だろう。

この観点から、インドの若年層に対する就労機会の提供は大きな役割を果たすはずである。インドの若者が日本の様々な仕事に携わる機会から多くのノウハウを習得し、そのノウハウを現地に戻って役立てるという循環を構築できれば、アッサム州を含むインド北東部全域の生産性の改善加速が期待できるだろう。そして、その交流は日本にも人材不足の緩和という大きなメリットをもたらす。まさにインドの若年雇用問題の緩和と人材育成、日本の人手不足の緩和、日印両政府の関係深化という「三方よし」の成果をもたらすことが期待できる。アッサム州に学校を設置することは、日印両政府のこれまでのひたむきな関係向上努力の成果を飛躍させ、日本にもアッサム州にも大きな経済的メリットをもたらすと確信している。「アクト・イースト・フォーラム」の成果をより広く顕在化させるために、この学校は極めて重要なパーツになると確信している。成功に向けて全力で取り組みたいと考えている。
《我々アセアン・ワンのお役に立てること》
我々は協同組合「善美」(https://www.zenbicoop.com)を通して、15の国々(インド、バングラデシュ、スリランカ、ネパール、ミヤンマー、インドネシア、カンボジア、ラオス、ベトナム、モンゴル、タイ、フィリピン、中国など)で35の送出機関と提携し、各国政府関係者や在日大使館との協力関係を深化させながら、多様な人材マッチングのお手伝いしております。
我々は、「良い人材を紹介するのは当たり前、日本一のアフターケアーを目指す」をモットーとしております。常に「不安」に直面するお客様に対して、迅速かつ丁寧に、改善志向のソリューションを提供すること、予期せぬ問題が発生した際の対応のスピードこそが、長いお付き合いの基本と考え、事業を行って参りました。
2024年は関係各位のご協力、お客様のご理解のもと、世界屈指の情報技術系大学であるインド工科大学カンプール校ウッタル・プラデーシュ州から日本企業に新卒学生を送り込むルートの開拓に成功いたしました。このルートをより太く、より有効なものにするという次のステップに向けて決意を新たにしております。
2025年は「5年で50万人」を目標に、インドの若者にチャンスを提供する取り組みを進めてまいります。日本では2025年以降、人口減少の影響が顕在化すると予想され、生活基盤維持に必要な人材の確保はいよいよ困難になる見通しです。ビジネスベースのこれまでの人材交流から、より深い相互理解をベースにした人材交流を進め、より高次元の「安心安全社会」、「共生社会」実現に貢献したいと考えております。企業様はもちろん、地方自治体の首長様を含め、この取り組みについて意見交換をさせていただければと考えております。
今後とも外国人材に関連する情報提供にも努めてまいります。2025年3月にはインドの人材に関するより広範囲なテーマでセミナーを開催する予定です。是非一度、ご面談の機会を賜りますよう、お願い申し上げます。