コラム 2026年01月16日
2026年 日本の人材不足と外国人材戦略の行方
《2026年の展望》
2025年はトランプ大統領の再就任で始まり、前政権からの矢継ぎ早の政策転換、4月の一方的な相互関税導入といったイベントがあった。相互関税の交渉の行方や導入に伴う物価や雇用への影響を見極める時間も必要になった。そのため、年央まで不透明感が残り、世界の経済活動は下押しされた。2026年はこのような不透明要因がなくなることはもちろん、2025年の反動増、米国の大型減税、米国の金利低下見通しなど世界経済の拡大をサポートする要因が多くある。2026年の日本経済も、世界経済の好調が維持され、実質賃金がプラスに転換すれば、2025年よりも強い基調で推移することが期待できる。
《2026年の人材確保は一段と困難に》
好調な経済見通しと人口減によって2026年の労働需給は2025年以上に逼迫することが見込まれる。国立社会保障・人口問題研究所の2026年の総人口予想(中位)は前年比60.1万人減の1億2,261万人となっている。65歳以上の人口予想は同3.5万人増の3,656万人だが、生産年齢人口(15~64歳)の予想は同35.8万人減の7,274万人となっている。2025年に比べて生産年齢人口の減少ペースは拡大し、65歳以上の人口増加ペースは縮小するため、2025年を超える経済成長が続くとすれば、2026年の労働需給は一段と逼迫することになる。そして、このような状況は2030年に向けて加速しながら進むリスクがある。
《2020年代初頭の人材不足の救世主は外国人材だったがその重要性は一段と増すだろう》
2010年代に顕在化し始めた生産年齢人口の減少による労働力不足は、主に女性や高齢者の就労率アップ、外国人材の活用、生産性改善によってカバーされた。しかし、生産年齢人口の減少ペースが加速し始めた2020年代に入ると、外国人材への依存が高まったようだ。就労率の上昇により女性や高齢者の就労者数増加ペースが減速していること、生産性改善が期待ほど進んでいないことなどにより、ポテンシャルの大きい外国人材への依存度が高まったとみられる。これを統計で確認すると(図表1)、2014年から2019年の在留外国人数の年平均増加率は6.7%だったが、2022年以降の前年比増加率は10%を超えている。2025年6月末も2024年末比5.0%の増加(年換算で10%)となっており、2010年代に比べて2020年代の外国人材の増勢が加速している。2030年に向けた人材戦略において、外国人材の重要性は高まるだろう。

《外国人材の採用も転換点に》
これまで外国人材の中核だったベトナムに変化がみられ、外国人材の供給源について検討する必要が生じている。ベトナム人の在留者数の年平均増加率をみると、2014年末から2019年末の32.8%から2019年末から2024年末には9.0%へ減速している。2025年6月末のベトナム人の在留者数は2024年末比2.6万人増の66.0万人で、規模では引き続き中国に次ぐポジションだが、増加数はネパールやインドネシアを下回っており、増加ペースが減速していることが確認できる。
ベトナム人の在留者数が伸び悩み始めた原因は、ベトナムの所得水準向上や円安による日本での就労の魅力低下などが考えられるが、競争状況の変化も影響している可能性がある。日本と同じように生産年齢人口の減少に悩む韓国の2025年6月末のベトナム人在留者数は2024年末比7.9万人増の34.1万人であり、増加数では日本を大きく上回った。韓国がベトナム人材の獲得について競争優位を確立した可能性がある。このような競争環境の変化により、今後のベトナム人材の獲得は、量だけではなく質の面でも厳しくなることを想定する必要があるだろう。
ベトナム以外の国々の在留者数の2019年末から2024年末の年平均増加率をみると、ネパールが19.2%、インドネシアが24.5%、ミヤンマーが33.2%となっている。また、これらの国々の在留者数の2025年6月末の2024年末比増減数はベトナムと同等以上の増加となっており、これらの国々がベトナムの在留者数の増加ペースの減速を補っていることから、これらの国々が重要な代替候補になっていることは疑いない。しかし、ネパールについては総人口が3,000万人程度でポテンシャルが小さいこと、ミヤンマーについては軍政下にあって政情が不安定であることを考慮する必要があるだろう。
インドネシアは人口2.8億人と大きなポテンシャルがあり、日本との関係も良好であることからベトナムの代替国として十分に期待できる。しかし、競争相手が多い点がリスク要因だ。インドネシアは歴史的な背景から華僑の存在感が非常に大きく、中国語の習得環境が整っているようだ。台湾、香港、シンガポール、マレーシアなどのほか、生産年齢人口減少が加速している中国沿岸部の諸都市などとの間で厳しい人材獲得競争が予想される。
アベノミクス以降、歴代内閣は外国人材の受け入れ拡大に積極的に取り組み、「選ばれる国」や「共生社会」の実現に取り組んできた。引き続き同様の努力は怠れないだろう。

《インド人材の開拓がソリューションになるのではないか》
図表3は2019年12月末から2024年末までの各国の在留者数の増減を在留資格別に分解したものである。ミヤンマーやインドネシアの在留者数の増加は「特定技能」や「技能実習」のウェートが高い。インドネシアの「技能実習」と「特定技能」を合計した在留者の増加数はベトナムと同水準になっており、既に日本の労働力不足をカバーする主役になっている。しかし、情報技術分野の人手不足に貢献する「技術・人文知識・国際業務」や「高度専門職」の在留者数の増加ペースは低水準だ。ネパールは「留学」、「技術・人文知識・国際業務」、「家族滞在」の在留資格による在留者数の増加が顕著だが、「技能実習」と「特定技能」といったエッセンシャルワークの分野での増加数は小さい。
人口規模や人口ピラミッドの形状などに裏打ちされた大きなポテンシャルがあり、友好な外交関係が安定的に推移することが見込まれ、エッセンシャルワーカーから高度専門職まで幅広い人材の獲得が、ワンストップで長期的に可能な国は、やはりインドではないだろうか。図表3からはインドと日本の人材交流の状況は、価値観を共有した上に構築された良好な外交関係やインドの人口規模から考えると極めて低水準であることがわかる。しかし、インドの若者の日本に関する関心が低いことなど、人材交流を妨げている要因を取り除き、適切な教育を施せば、インドを良質かつサスティナブルな人材供給源にすることは十分に可能だろう。
もう一つのインドの魅力はIT(情報技術)人材が豊富な点だ。世界有数の理系大学であるインド工科大学を中心に世界的に競争力のある理系大学が数多く存在する。その卒業生は活躍の場を海外に求める人材が多く、日本も候補の一つになっている。日本側から積極的に働きかければ「高度専門人材」や「技術・人文知識・国際業務」の人材を増やすことは可能だろう。事実、インドのIT産業の世界的な成功を受け、南アジアの国々がIT人材育成に力を入れてきた結果、「技術・人文知識・国際業務」の在留者数の増加人数は、インドを除く南アジア諸国(ネパール、スリランカ、バングラデシュ)の合計が46,259人となっているのに対し、ベトナムを除く東南アジア諸国(インドネシア、ミヤンマー、フィリピン、カンボジア)の合計は10,393人にとどまる。本家のインドにはこの分野においても大きなポテンシャルがあるといえるだろう。

《2026年も引き続きよろしくお願いいたします》
弊社は2025年にインドのアッサム州に「職業訓練機能を併設した日本語学校」を設立しました。インドの有能な若者に雇用のチャンスをもたらすと同時に、インドの人材の有するポテンシャルを日本の成長に繋げてまいりたい一心でチャレンジいたしました。様々なハプニングが発生したものの、現地政府との緊密な協力によって確実に前進させているところでございます。また、メガラヤ州の日本語教育普及と日本での就労を目指す活動に対しても積極的に関与し、ナガランド州とは日本語教育機関の設立の準備を開始しました。
弊社の設立したアッサム州の学校の卒業生だけではなく、日本での就労に高い関心を持っているメガラヤ州やナガランド州の優秀な若者を、皆様にご紹介できる日をワクワクしながら心待ちにしているところでございます。
ここまで辿り着けたのも「Lion at Bay」をご覧いただいている皆様のご理解やご支援によるものと考えております。心から感謝申し上げます。なんとかインドと日本の人材交流の道を作り上げ、太くし、皆様の御厚恩に報いたいと考えております。今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
2026年は、比較的好調な経済環境の下で、人手不足の厳しさが増すという難しい経営環境が想定されます。老若男女を問わず日本人採用のハードルが上がる一方、外国人材採用もベトナムの次を見据えながら進める必要が出てまいりました。弊社は「不安」に直面するお客様に対し、迅速かつ丁寧に、改善志向のソリューションを提供すること、予期せぬ問題が発生した際の対応のスピードこそが長いお付き合いの基本と考え、事業を行って参りましたが、2026年はまさにお客様のお役に立てる年になるとの思いを改めて強くしているところであります。是非一度、ご面談の機会を賜りますようお願い申し上げます。
末筆にて恐縮ではございますが、2026年が皆様にとって良い年になりますことを心から祈念申し上げます。また、そのお手伝いができればこれに過ぎる喜びはございません。ご精読、有難うございました。